トレードオフとは? その意味や使い方、解決法のヒントをご紹介!

トレードオフとは?

トレードオフ(trade off)とは、一方を得ると、他方を失う相容れない関係のことで、日本語では「二律背反」といいます。

日本には古くから「あちらを立てればこちらが立たず」という言葉がありますが、この関係がトレードオフです。

トレードオフの関係にあるときには、通常はどちらかの選択を迫られることになりますが、選択しなかったものの価値を「機会費用(opportunity cost)」といいます。

ただしトレードオフの関係にあるからといって必ずしも「二者択一」を迫られるとは限らず、両者からの利益を最大化させるポイントを探る努力が行われることもあります。

トレードオフの関係を認識するとき、それを前提として受け入れたうえでの意思決定が必要な場面があるいっぽう、技術革新(イノベーション)によって、かつてはトレードオフの関係にあったものを解消することができるケースもあります。

トレードオフの例:フィリップス曲線(経済学)

縦軸に失業率をとり、横軸にインフレ率をとってプロットすると右肩下がりの曲線になります。この曲線をフィリップス曲線といいます。

トレードオフとしてのフィリップス曲線

この関係を前提とすると、中央銀行は金融政策によって失業率を下げようとすればインフレ率が上昇し、インフレ率を抑えると失業率が上昇するというジレンマを抱えます。

そこで中央銀行は、「インフレ率を加速しない失業率(NAIRU)」のポイントを目指して、金融政策を行うことになります。

NAIRU(Non-Acceelerating Inflation Rate of Unemployment、インフレ非加速的失業率)よりも失業率が高い時には金融緩和を行って失業率をNAIRUまで下げ、すでに失業率がNAIRUに達しているときには金融引き締めによってインフレ率を下げようとします。

このときの中央銀行は、インフレ率と失業率がトレードオフの関係にあることを受け入れたうえで、そこから得られる利益を最大化するためにマクロ政策を行っていることになります。

トレードオフの例:産卵数(生物学)

動物は、天敵が沢山いるときは「小さい卵を多数」産み、天敵が多くないときは「大きい卵を少数」産む傾向があると指摘されています。

動物には身体という物理的限界がある以上、「大きな卵を多数」産むことはできず、卵の数と大きさはトレードオフの関係にあります。

このときの卵の数と大きさは、生き残る子の数が最大化するように決定されるか、そのように自然淘汰されます。

トレードオフの例:環境問題

企業に環境問題への取り組みを求めることは、そのコストが製品価格に内部転化されて、経済成長に悪影響を及ぼし、経済と環境はトレードオフの関係にあると指摘されます。

しかしながら短期的にはそうであっても、長期的には環境分野におけるイノベーションが、さらなる経済成長にむすびつくとの指摘があります。

トレードオフの例:投資商品

一般に、投資商品においてはハイリスク・ハイリターンであり、ローリスクでハイリターンを得られることはありません。
このことから投資商品においてはリスクとリターンがトレードオフの関係になっているとことが分かります。

トレードオフの例:時間

人間にとって時間は希少性のあるリソースであるため、何かに時間を振り向ければ、他の何かに振り向けることはできなくなり、トレードオフの関係になります。

難関資格に挑戦しようと思えば、その間は時間を勉学に振り向ける必要があり、労働や享楽に費やすことはできず、この選択しなかった価値が機会費用となります。

トレードオフスライダーとは?

トレードオフスライダーとは、プロジェクトの遂行にあたり複数存在する重点項目ごとに優先順位をつけ、それを可視化するためのツールのことをいいます。

開発には投下できるリソースに限りがあるため、納期、コスト、品質、スペック(スコープ)の間で、トレードオフの関係が生まれます。

短納期・低コストで高品質の製品を生むことは難しく、限られた資源をどこに振り向けるのかを決定する必要があります。

これを個人の中でも組織内でも、あるいはクライアントとの紛争防止のためにも可視化することが必要で、そのためのツールとして「トレードオフスライダー」が用いられています。

ビジネスにおけるトレードオフ

ビジネスにおけるトレードオフの関係は、イノベーションにとって解消することができることもあります。

例えば「品揃えと店舗コスト」は実店舗を構えていればトレードオフの関係にあるとしても、インターネットを利用したAmazonのようなECであれば、大規模な倉庫を郊外に設けることによって「品揃えが豊富で低コスト」なスキームを構築することができます。

トレードオフをイノベーションで解決することにこそ、ビジネスチャンスがあるともいえます。

トレードオフの別の例

トレードオフは、何かの減少または他の面での利益と引き換えに、別の何かを失うことを必要とする状況です。簡単に言えば、トレードオフとは、一方が増加し、他方が減少しなければならないことです。

トレードオフは、リソースの制約から生じます。たとえば、一定の空間に収まる物量には限りがあるため、それ以上を受け入れるには、コンテナ全体でいくつかの荷物を取り除く必要があります。

トレードオフの概念は、利点と欠点を完全に理解した上で行われる戦術的または戦略的な選択を示唆しています。
投資においては、リスクとリターンは相反するものと理解されています。安全性が高い代わりにリターンが低い債券に対して、リスクは高いが債券よりもリターンが大きい株式というようにです。

トレードオフの例:ゴミ箱の大きさ

日常生活におけるゴミ箱の大きさ一つとっても、トレードオフの関係は生じます。人が商品を購入するときには、これらのトレードオフを考慮しながら決定することとなります。

ゴミ箱が大きければ大量のごみを格納でき、ゴミ捨て場にゴミを運びにいく回数は減りますが、その分、1回あたりのごみの重量は大きくなって苦労することになります。

トレードオフの例:毛糸の手袋

指が分かれている手袋は指を自由に動かすことができる反面、外気にふれる面積が増え暖かさの面で劣ります。いっぽう、指が分かれていない手袋は暖かい反面、指をばらばらに動かすことができず、手の機能が制限されます。
これらのことから、毛糸の手袋は、機能性と暖かさがトレードオフの関係になっていることがわかります。

トレードオフの例:音楽の保存

音楽をコンピュータに保存する場合、MP3などの非可逆圧縮形式だとハードディスクの容量を節約できますが、音質は低下します。 FLACやALACなどのロスレス圧縮方式は、より多くのディスク容量を必要としますが、より良いサウンドが提供されます。
このことから、音質とディスク容量はトレードオフの関係になっていることがわかります。

トレードオフの例:車のサイズ

大きな車は多くの人を運ぶことができ、かつ、丈夫な傾向にあります。しかし大きな車は重量が重く燃費が悪い傾向にあります。
いっぽう軽自動車のような小型車は、少ない乗客しか運ぶことができず、かつ、大型車よりは安全性に劣ります。しかし軽量であることから、燃費効率はよくなります。

したがって、車のサイズには、乗客の定員、安全性、および燃費に関して複数のトレードオフの関係が生じることとなります。

トレードオフの例:競技と身体

陸上競技では、短距離とマラソンとではまったく異なる身体的特性が要求されます。プロのランナーがマラソンと短距離走の両方で活躍することは通常ないため、どちらを選択するかはトレードオフの関係になります。

トレードオフの例:経済学

経済学においては希少性の概念が大切となるため、トレードオフについて「機会費用」をもちいて説明されることが多くあります。たとえば、プロ野球の試合を観に行く人にとっての機会費用は、自宅でのんびりとお気に入りのテレビ番組を見るという選択肢を失うことです。またその試合が勤務時間中に行われる場合、その人は仕事を休む必要があるため、「機会費用」は数時間分の仕事の対価となります。

また経済学におけるトレードオフは、パレート最適を図式化したエッジワースのボックスダイアグラムによって図式化されます。

ミクロ経済学で分析される「パレート効率的な資源配分」とは、「誰かの効用を減少させることなくして、別の誰かの効用を増加させることができない」状態のことをいい、経済主体間でトレードオフの関係が生じています。一例として、生産理論では、ある財の産出と別の財の産出とのトレードオフは、生産可能性フロンティアによってグラフで示されます。

トレードオフを説明するエッジワースボックスダイアグラム
エッジワースのボックスダイアグラム

トレードオフの例:工学・エンジニアリング

工学では、必要な測定品質を保証しながら、機器の電力効率を最大化するためにトレードオフが使用されます。

トレードオフの例:コンピュータサイエンス

プログラムはより多くのメモリを使用するとより高速に実行でき、両者はトレードオフの関係にあります。

トレードオフの例:倫理

倫理には、互いにトレードオフしなければならない利益の競合が含まれることがよくあります。典型例として「5人を助けるために1人を殺すことは許されるのか?」というトロッコ問題があります。

5人を助けるために1人を殺すことはトレードオフの関係になります。

トレードオフの関係:医療

医療においても、パンデミックで生じる医療崩壊の局面では、限られた医療資源を、多くの患者のうち誰に割り当てるかという「命の選別トリアージ)」に直面することがあります。

トリアージ(triage)とは、フランス語のtrier から由来し、ある基準で選別するという意味です。

これも、誰かに医療を提供する選択をすることが、別の誰かには医療を提供しないことを意味し、トレードオフの関係になります。

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