コンコルド効果とは? その由来と、ビジネス、恋愛、ギャンブル、受験にみるコンコルド効果

コンコルド効果について考える人物

コンコルド効果とは?

コンコルド効果(Concorde effect)とは、今後も投資をつづけることが損失の拡大につながると認識しているにもかかわらず、投資をやめる決定をせず、それまでの金銭的・時間的な投資分を惜しんで、さらに投資を継続してしまうことをいいます。

悩ましいのは、あらゆる新規事業は、はじめはすべて「回収を見込んだ投資」からはじまることです。投資直後から売上が発生し、直ちに回収を完了できることはまれであり、ほとんどの新規事業は3年程度をかけて投資の回収をはかります。

新規事業はこのように始まるため、途中で回収の見込みが立たたないと判明したときに、どのような決断をするのかが問われます。

その意味で、損失が大きく回収の見込みがたたないときに、いかにそれ以上の損失を拡大させることなく撤退するか、出口戦略を考えておくことが重要となります。

コンコルド効果の由来

コンコルドは、「超音速」で飛ぶ旅客機として鳴り物入りで開発され、1976年には定期国際航空路線に就航しました。

2020年にボーイングがニューヨーク・ロンドン間を4時間56分で飛びましたが、コンコルドは同区間を2時間52分で飛行したことからみても、技術水準としては最先端の旅客機でした。

しかしながら超音速を実現するために燃費が悪く、細身の胴体から定員が100名(座席は通路の両側に2席×25列で100席)と少なく収益性の悪さが指摘されており、量産機は開発国である英仏の航空会社向けにわずか16機が製造されたのみでした。
コンコルドは250機の製造で採算がとれると計算されていましたから、収益面での成功がいかに非現実的な望みであったかが分かります。

開発当初は世界各国のフラッグシップからの発注を見込んでいたコンコルドですが、フタを開けてみると、一般的な航空機よりも長い滑走路を必要とすること、途中給油無しに太平洋を横断することができないこと、海外旅行が大衆化しつつある世界情勢に逆行しむしろ高額な富裕層向けの料金設定しか実現できなことなどが敬遠され、コンコルドは経済的に成り立たないと判明しました。

それでも英国とフランス政府は開発をつづけ、最終的には数十億ドルを費やしたあげくに、撤退を余儀なくされたのです。

コンコルド効果とサンクコスト(埋没費用)

コンコルド効果は、過去の投資に執着して合理的な決断ができず、ずるずると投資を継続してしまった過去の代表的な事例が「コンコルド」であったことからネーミングされました。
しかし経済学の分野では古くから「サンクコスト(埋没費用)」として広く知られている概念です。

サンクコストとは、「回収することができなくなった費用」のことをいいます。

サンクコストはどのような手段を用いても最早「回収することができない費用」ですので、今後の意思決定から除外する必要があります。

しかしそれが難しいのは、「回収することができない」と最終判断するのが他ならぬ人間であり、心理的なバイアスの影響を受けるからです。
まして、その決定をするのが個人ではなく経営陣や政府など人間の集合体である場合には、より困難となります。

コンコルドのケースでも、開発中止の決断が遅れたのは、中止の決断が誤りを認めたことを意味し、責任を追及されることを恐れたからだとの指摘があります。

コンコルド効果の例

サンクコストの概念は経済学の分野で古くからあるもので、英仏政府や経営陣がそれを知らなかったことは考えにくいです。

しかしそれでも合理的な決定が難しいのは、そこに人間の心理がかかわってくるためです。
高度な教育を受けている人であっても、コンコルド効果を避けることがいかに難しいかを示しています。

ここでは、われわれの身近な生活の中にあるコンコルド効果の例を見てみましょう。

株式投資

株式投資の世界では、昔から「損切り」、「ロスカット」という言葉が知られています。

損切りとは、含み損を抱えている投資家が、保有する株式を売却して損失を確定させることをいいます。含み損とは、株式の時価(=現在の市場価格)が簿価(=購入時の価格)を下回っている場合の差額のことです。

買値よりも現在値が下回っているときに株式を売却すれば損失になりますが、売らずに保有していなければ「含み損」であって損失は確定しません。

しかしながらその後の回復が見込めないと判断できるケースでは、そのまま保有し続けた場合、さらに株価が下落して損失額が膨らむ可能性があります。
損切りをしてあえて損失額を確定させることで、それ以上は損失が膨らまないようにすることができます。

クレーンゲーム(UFOキャッチャー)

ゲームセンターにあるクレーンゲーム。皆さんも一度や二度は遊んだことがあるかもしれません。透明なケースの中に陳列された縫いぐるみなどを、天井に設置されたクレーンのアームを使って持ち上げて、取り出し口に運んで獲得するゲームです。

お気に入りの縫いぐるみを、数多くのチャレンジの末に取り出し口のすぐ近くまで運んだにも拘わらずなかなか獲得することができないときに、諦める決断をすることはなかなかに難しいです。

これはまさに、縫いぐるみを取り出し口付近まで運ぶことに費やした時間的、金銭的、労力的コストを、サンクコストとして認めることの困難さに起因しています。

同様のコンコルド効果が、パチンコやスロットなどのギャンブルでも発生することは言うまでもありません。ギャンブルでは特に、これまで費やしたコストを「一発逆転」で取り戻す可能性が理論上はゼロではないために途中でやめることが難しく、ずるずると損失を拡大させてしまうことがあります。

ソーシャルゲーム

ソーシャルゲームとは、SNSなどのオンライン上で提供されるゲームのことをいいます。「ガチャ課金」と呼ばれる課金要素がある「ソシャゲ」はもちろんのこと、そのゲームに費やした時間的要素のみであってもコンコルド効果は発生します。

毎日プレイしなければアイテムを失うなどの要素があるソーシャルゲームでは、費やす時間が膨大になり、そのゲームから離れることに心理的な抵抗を覚えるようになります。

恋愛 / 結婚

コンコルド効果は恋愛や結婚においてもみられます。当初はお互いの良いところばかりが見えていたのに、付き合いを継続するうちに性格や価値観の不一致が判明することはあります。

しかしながら、過去のデートや結婚生活に費やしてきた金銭と時間を考えて、関係を解消するという決断に踏み出すことができず、ずるずるとお付き合いや結婚生活をつづけていくことがこれに当たります。

腐れ縁という言葉が「意に反しダラダラと続いているマイナスな関係」を意味するとすれば、コンコルド効果であると言えます。

受験

受験においてもコンコルド効果は発生します。受験は多くの人が自己の人生をかけて全力で挑むイベントであるために、その準備に投下する金銭と時間ははんぱなものでは済みません。

そこで受験でたてた目標(志望校合格や資格試験合格)を達成することができなかったときに、どのような選択をするかが問われることとなります。

もちろんコストの回収の見込みがあるのであれば「プロジェクトとしての受験」を継続し翌年再チャレンジすることもありえる選択ですし、見込みがないことが判明したのであれば、それ以上の金銭と時間をつぎこむことなく次の目標に向かうことが生産的と言えます。

会社においても人生においても、大きなプロジェクトであればあるほど、撤退の決断はしにくくなります。

コンコルド効果を生む4つの心理的要因

サンクコスト、損切り。コンコルド効果と関連するさまざまな類似の概念を知っていても、私たちはコンコルド効果から逃れることがなかなかできません。

ここでは、人がコンコルド効果にはまってしまう心理的な要因について解説します。

損失を確定させたくない心理

購入した株式の価格が下がったとしても、売却をしない限り損失が確定することはありませんが、損失が拡大しつづけるリスクを抱え込むことになります。

しかしながら破綻したプロジェクトがその後も絶対に成功しないことを証明する手立てはないため、決断は先送りにされ、コンコルド効果にはまることになります。

人気漫画の名セリフとして知られる「諦めたらそこで試合終了ですよ」という言葉が真実であるのは、まだ逆転のチャンスが残されているときに限られます。

自己の無力を認めたくない心理

プロジェクトを中止させ損失を確定させることは、計画の甘さや能力不足などの現実に直面することを迫られます。
このため、現実を直視することを回避するために、破綻したプロジェクトが「継続」されることとなり、コンコルド効果につながります。

過度に楽観的な確率バイアス

統計的な確率ではほとんど起こらないような出来事であっても、その確率がゼロではない以上、その確率が実現することを期待することができます。

こうして、統計学的にはめったに起こらない「一発逆転」を信じて、努力を継続してしまう傾向が、コンコルド効果につながります。

個人的な責任感

任された以上、やり遂げなければならない。期待にこたえなければならないという個人的な責任感が、プロジェクトの中止という決断を先延ばしにさせる傾向につながり、コンコルド効果につながります。

コンコルド効果を生む心理的要因を封じる工夫

コンコルド効果を防ぐために「ゼロベース思考」をしようとの主張があります。しかしながら、もはやゼロベースで考える冷静な思考が奪われてしまっているからこそコンコルド効果が生じるのだとも指摘されています。
このため、損失への対応を現実に迫られる前に、プロジェクトを開始する前から、万が一のときの撤退を計画しておくことが大切とされています。

出口戦略

出口戦略は、負け戦においていかに損失を少なく抑えて撤退するかという計画のことをいい、もともとは軍事用語です。

会計の分野では「継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)」と言って、会社はずっと将来にわたって継続するという前提が置かれています。

たしかに会社や事業は継続していくことが望ましいですが、そこに関与する人間には寿命がありますので、会社や事業とはどこかで一線を引く必要が出てきます。

そこで現在では、創業時や新規事業立ち上げの時点で、事業計画の中に「出口戦略」を盛り込んでおくことが当たり前とされています。

ここでの出口戦略は、軍事用語としての出口戦略よりももっと意味合いが広くとられており、「勝ち戦」においての出口も想定されます。たとえば、IPOや事業譲渡などがそれです。

あらゆる新規事業は「回収を見込んだ投資」からはじまります。その見込みが当たるか外れるかは、実際に始めて見たければ本当のところはわからないものです。
思いがけず時代の風が吹くこともあれば、コンコルドのように、思った以上に売れないこともあるでしょう。

何年で損益分岐点に到しなけれな撤退する、あるいは、損失がいくらに達した時点で撤退するというように、撤退の基準も事業開始の時点で決めておくと、コンコルド効果に陥ることもなくなります。

第三者のアドバイス

コンコルド効果は、認知バイアスの1種であり、当事者は上記の心理的要因から合理的な決定をすることができなくなっています。

このような認知バイアスから逃れる手立ての一つとして挙げられているのが、当事者と利害を共にしない第三者からアドバイスを受けることとされています。

もうこの辺でやめておいたほうがいいよという冷静なアドバイスをしてくれる人物を大切にしましょう。

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