技能実習制度とは~【技能実習生】受け入れの仕組みと概要、職種、問題点について

ベトナム人技能実習生

日本に41万人もいる技能実習生。都会にすんでいるから身近にいないですって?

たしかに技能実習生はどちらかというと群馬や千葉など郊外に多く住んでいる傾向にありますが、都会でもちゃんと活躍しています。たとえば東京の湾岸地域の物流倉庫地帯では、誰もが知る世界的企業の関連会社で、技能実習生が頑張っています。あなたがオンラインで注文したその荷物にも、ひょっとしたら技能実習生がかかわっているかもしれません。

筆者は、技能実習生受入れのための事業協同組合(監理団体)の設立に行政書士として数多くたずさわり、企業単独型、団体監理型問わず多くの現場をみてきた経験上、
週末には日本人社員と技能実習生が一緒になって鍋パーティーを開いて交流したり行楽に出かけたりするような楽しい職場がある一方で、
奴隷制人身取引とまで評される過酷な職場があることも承知しています。

この記事では、多くの方がなんとなく知っているようで良くは知らない、技能実習制度の概要と課題についてわかりやすく解説します。

技能実習制度とは

技能実習制度とは、開発途上国の人材が、日本の企業等に雇用されてその業務に従事することによって、技能を修得、習熟または熟達させるための制度と定義されています。

日本の企業「等」としているのは、雇用主は必ずしも企業にかぎられていないためで、修得、習熟、熟達の表現はそれぞれ、1号、2号、3号の技能実習における技能の到達目標に対応しています。

技能実習制度の目的

技能実習法は、技能実習制度の目的を、「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進すること」としています(技能実習法1条)。

また技能実習法3条は、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。」としています。

このことから、技能実習制度は、国際協力のための制度であって、労働力確保のための制度ではないことになります。

この点、2019年に創設された在留資格「特定技能」の制度目的が、「深刻化する人手不足に対応するため、(中略)一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組み」(基本方針)とされ、正面から労働力確保のための制度と位置づけられていることと対比してください。くわしい比較は別記事「技能実習と特定技能の違い」で解説しています。

技能実習制度の現状

近年、技能実習生の増加のペースは著しく、2015年末には19万人であったものが、4年後の2019年末には41万人と2倍以上となっています。

技能実習生の数の推移
(出典)公益財団法人国際人材協力機構

技能実習制度の変遷・歴史

技能実習制度の前身ができたのは約40年前、技能実習制度ができたのは約30年前ですからかなり長く運用されている制度と言うことができます。
しかしながら、在留資格「技能実習」ができてからはまだ10年程度であり、技能実習法の施行はここ数年のできごとです。

【変遷】

1982年1月 企業単独型による外国人研修生の受け入れが開始される(外国人研修制度)。

1990年4月 在留資格「研修」の創設(入管法改正)により、団体監理型による外国人研修生の受け入れが開始される。

1993年4月 在留資格「特定活動」の一類型として技能実習制度が創設される(法務大臣告示)。

2010年7月 在留資格「技能実習」の創設(入管法改正)。従来の1年目の研修を「技能実習1号」とし、2、3年目の特定活動を「技能実習2号」とした。

2017年11月 技能実習法の施行。4、5年目の実習が可能となる「技能実習3号」が設けられる。

技能実習制度の仕組み・概要

技能実習スキームの5プレイヤー

技能実習制度は多くのプレイヤーによって成り立つ複雑な制度となっています。この点、特定技能制度が原則として企業と労働者のみで成り立つスキームであることと対比されます。
このうち、監理団体送出機関は、団体監理型(後述)に特有のプレイヤーであり、企業単独型(後述)のスキームでは登場しません。

技能実習制度,企業単独型,
技能実習制度,団体管理型,

実習実施者:実習実施者とは、技能実習を行わせる受入れ企業のことをいいます。外国人と雇用契約を結んで働いてもらう日本の企業です。

監理団体:監理団体とは、技能実習法に基づいて許可を受けて監理事業を行なう日本の非営利法人のことをいいます(技能実習法2条10号)。

送出機関:送出機関とは、技能実習生になろうとする者からの求職の申し込みを日本の監理団体に取り次ぐことができる外国の企業のことをいいます。

外国人技能実習機構(OTIT):外国人技能実習機構とは、技能実習法に基づき設立された法人で、技能実習計画の認定など法で定められた業務を行います(技能実習法87条)。

技能実習生の2つの受け入れ方式

技能実習制度には、つぎの2つの受け入れ方式があります。

企業単独型:日本の企業(実習実施者)が、外国にある自社の支店、子会社、合弁会社や取引先企業から職員を受け入れて技能実習を実施する方式です。

団体監理型:事業協同組合など営利を目的としない団体(監理団体)が送出機関から取り次がれた技能実習生を受け入れて、傘下の企業(実習実施者)において技能実習を実施する方式です。

現状1:統計によれば、技能実習全体の97%を団体管理型のスキームで実施しており、企業単独型は全体のわずか3%であることがわかります (2018年末、出入国在留管理庁)

現状2:企業単独型技能実習は、従業員数1000名以上の企業が64.6%を占めており、逆に団体管理型技能実習は従業員数19名以下の企業が42.5%を占めています(公益財団法人国際人材協力機構)。
このことから企業単独型技能実習は大企業に好んで使われ、団体管理型技能実習は零細企業に好んで利用されていることが分かります。

「優良」な監理団体と実習実施者への優遇措置

優良な監理団体、実習実施者と認められると、3号技能実習を行うことができます。優良認定を受けていないと、2号技能実習にまでしか関与することができません。

すなわち、実習実施者(受入企業)が3号技能実習を行なうには外国人技能実習機構から優良認定を受ける必要があり、
監理団体が3号技能実習の実習監理を行なうには主務大臣から「一般監理事業」の許可を受ける必要があります。

なお、監理団体の数は2021年5月現在で全国3,200を超えており、どの監理団体とお付き合いをするか決めきれないようにも思えますが、実はある程度候補は絞り込むことができます。

なぜなら、監理団体はその多くが事業協同組合という性格上、活動地域と業界に枠がありますし、得意な国も違うからです。監理団体の選び方については別記事「監理団体とは」でくわしく解説しています。

なお、2021年5月現在、一般監理団体の数は1669団体、特定監理団体の数は1614団体となっており、ほぼ同数です。

技能実習の区分と在留資格

技能実習は、入国後1年目の技能を修得する1号技能実習、2・3年目の技能に習熟する2号技能実習、4・5年目の技能に熟達する3号技能実習とに分けられます。

在留資格はそれぞれの区分ごとに、技能実習1号、2号、3号が与えられ、企業単独型は「イ」、団体監理型は「ロ」の符号が付されます。

技能実習制度のフロー
(出典)公益財団法人国際人材協力機構

1号から2号へ、2号から3号へ移行するためには、実習生本人が「技能評価試験」に合格する必要があり、合格できずにその時点で帰国する技能実習生も現実にいらっしゃいます。
この技能評価試験は1号から2号への移行の際は学科と実技、2号から3号への移行時には実技に合格することが必要です。

なお後述のとおり、それぞれの移行時において「移行対象職種」(後述)が設けられており、これに含まれていない場合は、制度上次の区分へ移行できません。

企業単独型技能実習においては、下記の図のとおり、2号への移行対象職種「以外の」職種における1号技能実習もよく行われています。
その理由は、技能実習制度の前身である外国人研修生制度が、企業単独型の研修生受け入れであったという沿革をご確認いただけるとご納得いただけるでしょう。

技能実習の職種
(出典)公益財団法人国際人材協力機構

技能実習生の人数

受入企業(実習実施者)が受け入れることができる技能実習生の人数は、受入企業の常勤職員の総数に応じた上限が設けられています。
また優良認定を受けると、1号、2号の上限が受けていない企業の2倍になり、さらに3号技能実習を行なうことができます。

なお、2号の人数が1号の2倍になっているのは、1号技能実習の期間が1年であるのに対し、2号技能実習の期間は2年であるためです。

受入企業の
常勤職員
1号
(通常)
2号
(通常)
1号
(優良)
2号
(優良)
3号
(優良)
301人以上 常勤職員総数の20分の1 常勤職員総数の10分の1 常勤職員総数の10分の1 常勤職員総数の5分の1 常勤職員総数の10分の3
201~300人 15人 30人 30人 60人 90人
101~200人 10人 20人 20人 40人 60人
51~100人 6人 12人 12人 24人 36人
41~50人 5人 10人 10人 20人 30人
31~40人 4人 8人 8人 16人 24人
30人以下 3人 6人 6人 12人 18人

技能実習の対象職種・作業

技能実習を行なうことができる対象職種・作業は、技能実習が1号、2号、3号と進むにつれて少なくなっていきます。

技能実習制度の移行対象職種
無断転載を禁ずる

1号技能実習を行なうことができる職種に制限はありませんが、同一作業の反復でないことが必要です。同一作業の反復であれば、わざわざ日本で「実習」するまでもないためです。

2号技能実習を行うことができる職種は「2号移行対象職種」と呼ばれ、2021年3月現在において、85職種・156作業あります。

また3号技能実習を行うことができる職種は「3号移行対象職種」とでも呼ぶべきものであり、2021年3月現在において、77職種・135作業あります。

技能実習の2号移行対象職種
(出典)公益財団法人国際人材協力機構

技能実習生の給与

2018年版JITCO白書によれば、1号技能実習生の支給予定賃金の平均は、企業単独型で14万7293円、団体管理型で13万6835円となっています。これには時間外賃金が含まれていません。
技能実習生の給与については別記事「技能実習生の給与」でくわしくご紹介しています。

技能実習制度の課題・問題点

出資者兼お客様を指導・監査する監理団体

監理団体のガバナンス
無断転載を禁ずる

技能実習制度の大きな問題点の1つは、受入企業に対する定期監査を、監理団体が行うこととしている点です。

監理団体は、監理団体である前に、多くは「事業協同組合」です。技能実習生の紹介を事業協同組合から受けるために、受入れ企業は組合に出資をし、組合員となります。
組合員は事業協同組合の最高意思決定機関である「総会」の構成員であり、株式会社でいえば「株主」に相当します。

営利団体である株式会社と非営利団体である事業協同組合を一律に比較することはできませんが、株式会社が出資者である株主を監査するということがあり得ない以上、事業協同組合である監理団体が、組合員たる受入れ企業を監査するということが無理筋なスキームであることがお分かりいただけるでしょう。

このため、かねてより受入企業の不正行為を監理団体が一緒になって隠ぺいするたぐいの事例が多く報告されてきました。なお、事業協同組合については別記事「監理団体の設立」でくわしくご説明しています。

2017年施行の技能実習法の対応

技能実習法はこのような構造上の問題点を解決するために、外部役員または外部監査の導入をはかりました。
これは株式会社における社外監査役の設置と同様の効果を狙ったものですが、社外監査役の監査対象が株主ではない以上、似て非なるものです。
筆者もいくつかの監理団体の外部監査をお引き受けしていますが、「手加減をしない」ことに同意していただける組合さまとのみお付き合いをさせていただいています。

むしろ私がそれ以上に効果的と感じているのが、監理団体の内発的な動機付けを誘発する仕掛けです。
それが「一般監理事業」と「特定監理事業」の区分けであり、一般監理事業が許可されていなければ3号技能実習の監理事業を行なうことができないとしたことです。

特定監理事業の監理団体のもとでは最大3年間しか技能実習をすることができないのに対し、優良認定された一般監理事業の監理団体のもとでは最大5年間も技能実習をすることができるのですから、今後、特定監理事業の監理団体に新規に加入する組合員の数は徐々に減っていくものと考えられます。

つまり、監理団体は自らの生き残りをかけて優良認定を勝ち取り、また維持しなければならず、組合と組合員との仲間内の関係は、今後減っていくでしょう。

技能実習生の「奴隷化」を生む転籍(転職)の禁止

技能実習生は、技能実習生の都合では実習先の受入企業を変更することはできません(要領)。これは技能実習生にとっては、最初の受入企業が運悪くブラック企業であったときでも、その企業で技能実習を最後まで継続するか、途中で帰国するかの二者択一しかないということを意味します。

しかしながら技能実習生はベトナムのケースでは平均して100万円前後の借金を背負って来日しているため、技能実習を途中で終わらせて帰国するわけにはいかない深刻な事情があるのです。
中には技能実習生のご両親が自宅の所有権を銀行の担保として差し出しているケースもあり、途中帰国して借金の返済が滞れば、両親が家を失う事態にもなりかねません。

このような事情のため、技能実習生は受入企業がどんなにブラックな職場環境でもひたすら耐えて、技能実習を継続することを強いられてきました。

2017年施行の技能実習法の対応

技能実習法はこの問題に対応するため、倒産など受入企業の事情で実習を継続することが困難になった時に、技能実習生は希望すれば実習先を変更することができることとし、外国人技能実習機構がこの支援を行なうこととしました。

しかし変更先の受入企業が見つからなければそれまでであり、外国人技能実習機構が責任をもって次の実習先を確保してくれるわけではありません。

アメリカの人身取引報告書(2020)は、「技能実習制度改革法は、表向きには、技能実習生が一旦日本へ入国すれば、その後は自分の意志で雇用主を変更できる権利を拡大したが、市民社会団体の専門家と政府職員は、ほとんどの技能実習生が未だに雇用主の変更を阻止されていると述べた。」としています。

技能実習生の「失踪」を生む借金問題

失踪した技能実習生は、2019年には8796人もいて、大きく報道され社会問題化しているほどです。

多くの技能実習生は来日前に両親や銀行からベトナムの場合100万円前後を借金していますが、技能実習生が毎月どんなに節約をしても月に7万円を貯めるのがやっとです。
そうすると、1年頑張って働いても100万円を返済することはできず、2年目に突入してから借金返済のめどが立つことになります。

技能実習生はおおむね借金を完済し、さらに貯金を300万円つくって帰国したいというおおむね共通した希望をもっており、その実現のためには実習先の変更(転籍)が認められていないため、失踪して別の就職先を探す人がでてくることになります。SNSが発達した現在、同胞のコミュニティを通じて失踪しても就職先はすぐにみつかるようです。

アメリカの人身取引報告書(2020)は、「送り出し国と日本との間で過剰な金銭徴収の慣行を抑制することを目的とした二国間合意があるにもかかわらず、(中略)技能実習生は、(中略)職を得るために、数千ドルの過大な労働者負担金、保証金や不明瞭な「手数料を母国の送り出し機関に支払っている。」」としています。

2017年施行の技能実習法の対応

技能実習法は、送出国と日本との間で二国間取決めを締結し、送出国政府が保証金の徴収、違約金契約をしないことを含む認定基準に従って送出機関の認定を行なうこととし、日本側は送出国政府が認定した送出機関からの技能実習生のみを受け入れることとしました。送出機関の要件については別記事「送出機関とは」でくわしくご紹介しています。

この措置がうまく機能することを期待していますが、開発途上国地域においてはあらゆる局面で賄賂が横行していることもあり、送出国が適切な認定をしてくれるのかどうか筆者は少々懐疑的にみています。

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東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート行政書士事務所を開業。業歴は10年を超える。専門は入管法、国籍法。
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