この記事では、特定技能制度における「登録支援機関」について、登録の方法から、利用者が選ぶさいのポイントまでくわしく解説します。
目次
- 1 登録支援機関とは?
- 2 登録支援機関の利用の効果
- 3 「支援計画適正実施確保基準」とは?
- 4 登録支援機関の登録申請
- 5 登録支援機関の登録申請の提出書類
- 6 登録支援機関による支援内容とは?
- 6.1 登録支援機関による支援内容①:事前ガイダンス
- 6.2 登録支援機関による支援内容②:出入国する際の送迎
- 6.3 登録支援機関による支援内容③:住居確保・生活に必要な契約支援
- 6.4 登録支援機関による支援内容④:生活オリエンテーション
- 6.5 登録支援機関による支援内容⑤:公的手続等への同行
- 6.6 登録支援機関による支援内容⑥:日本語学習の機会の提供
- 6.7 登録支援機関による支援内容⑦:相談・苦情への対応
- 6.8 登録支援機関による支援内容⑧:日本人との交流促進
- 6.9 登録支援機関による支援内容⑨:転職支援(人員整理等の場合)
- 6.10 登録支援機関による支援内容⑩:定期的な面談・行政機関への通報
- 7 登録支援機関を利用するメリット
- 8 登録支援機関を利用するデメリット
- 9 登録支援機関による届出(随時報告・定期報告)
- 10 登録支援機関の一覧
登録支援機関とは?
登録支援機関とは、特定技能所属機関との契約に基づく委託を受けて、1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を行なう者として、出入国在留管理庁長官の登録を受けた者をいいます。

ここでいう特定技能所属機関とは、特定技能外国人を雇用するいわゆる受入企業のことです。
登録支援機関が行なうことが許されるのは支援計画の「実施」であり、支援計画の「作成」は許されていないことに注意してください。
支援計画はあくまでも特定技能所属機関が作成します(入管法2条の5第6項)。そして登録支援機関が作成の「補助」をすることはできます(特定技能要領)。
なお、行政書士でない登録支援機関が支援計画の作成までしてしまうと、行政書士法違反となります(行政書士法19条1項本文)。
※この記事で支援計画とは、1号特定技能外国人支援計画をいうものとします。
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登録支援機関の義務
登録支援機関は、①外国人への支援を適切に実施すること、 ② 出入国在留管理庁への各種届出を行なうこと、という2つの義務を負います。
これらを怠ると登録を取り消されることがあります。
登録支援機関の利用の効果
登録支援機関は、受入企業との支援委託契約に基づいて、支援計画に基づく支援の全部または一部の実施を行ないます。
登録支援機関を利用するか否かは自由であり、また、支援計画の実施の全部を委託してもよく、一部を委託しても構いません。ただしその効果はつぎのようになります。
登録支援機関に支援計画の「全部」の実施を委託したとき
受入企業が「支援計画適正実施確保基準(後述)」を満たしたものとみなされます(入管法2条の5第5項)。
登録支援機関に支援計画の「一部」の実施を委託したとき
一部のみを委託するときは、受入企業が「支援計画適正実施確保基準(後述)」を満たしたものとみなされることがないため、受入企業みずからが「支援計画適正実施確保基準」を満たす必要があります。
登録支援機関を利用しないとき
受入企業みずからが「支援計画適正実施確保基準(後述)」を満たす必要があります。
「支援計画適正実施確保基準」とは?
受入企業みずからが、または、登録支援機関に全部の実施を委託することにより満たす必要がある基準とはつぎのとおりです(特定技能基準省令2条2項)。
①以下のいずれかに該当すること
ア 過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ。)の受入れ又は管理を適正に行った実績があり,かつ,役職員の中から,支援責任者及び支援担当者(事業所ごとに1名以上。以下同じ。)を選任していること(支援責任者と支援担当者は兼任可。以下同じ)
イ 役職員で過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ。)の生活相談等に従事した経験を有するものの中から,支援責任者及び支援担当者を選任していること
ウ ア又はイと同程度に支援業務を適正に実施することができる者で,役職員の中から,支援責任者及び支援担当者を選任していること
②外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を有していること
③支援状況に係る文書を作成し,雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
④支援責任者及び支援担当者が,支援計画の中立な実施を行うことができ,かつ,欠格事由に該当しないこと
⑤5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
⑥支援責任者又は支援担当者が,外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること
⑦分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)
登録支援機関の登録申請
次に掲げる登録拒否事由に該当しなければ、法人だけでなく、個人も登録が認められます。
登録支援機関の登録拒否事由
① 関係法律による刑罰に処せられ,その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
② 心身の故障により支援業務を適正に行うことができない者,破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者等
③ 登録支援機関としての登録を取り消された日から5年を経過しない者(取り消された法人の役員であった者を含む)
④ 登録の申請の日前5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者
⑤ 暴力団員等暴力団排除の観点から定める事由に該当する者
⑥ 受入れ機関や技能実習制度における実習実施者等であった場合において,過去1年間に自らの責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させている者
⑦ 支援責任者及び支援担当者が選任されていない者(支援責任者と支援担当者との兼任は可)
⑧ 次のいずれにも該当しない者
ア 過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ。)の受入れ又は管理を適正に行った実績がある者であること
イ 過去2年間に報酬を得る目的で業として本邦在留外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有する者であること
ウ 支援責任者及び支援担当者が過去5年間に2年以上中長期在留者(就労資格のみ。)の生活相談業務に従事した一定の経験を有する者であること
エ ア~ウと同程度に支援業務を適正に実施することができる者であること
⑨ 外国人が十分理解できる言語による情報提供・相談等の支援を実施することができる体制を有していない者
⑩ 支援業務の実施状況に係る文書を作成し,雇用契約終了日から1年以上備え置かない者
⑪ 支援責任者又は支援担当者が一定の前科がある等の欠格事由に該当する者
⑫ 支援に要する費用を,直接又は間接に外国人に負担させる者
⑬ 支援委託契約を締結するに当たり,受入れ機関に対し,支援に要する費用の額及び内訳を示さない者
申請者
特定技能所属機関から契約により委託を受けて適合1号特定技能外国人支援計画の全部の実施の業務を行う者
申請時期及び審査期間
審査におおむね2か月を要します。支援業務の開始予定日のおおむね2か月前までに申請を行ってください。
登録支援機関の登録申請の提出書類
提出書類の一覧・確認表にしたがって準備していきましょう。

〇登録支援機関・登録申請書類①:手数料納付書
新規登録の場合は2万8,400円の収入印紙を貼付します。
〇登録支援機関・登録申請書類②:登録支援機関登録申請書
〇登録支援機関・登録申請書類③:登記事項証明書
法人の場合に提出が必要です。
〇登録支援機関・登録申請書類④:住民票の写し
個人事業主の場合に提出が必要です。
マイナンバーの記載がないもので、本籍地の記載があるものを取得します。
〇登録支援機関・登録申請書類⑤:定款又は寄附行為の写し
法人の場合に提出が必要です。
〇登録支援機関・登録申請書類⑥:役員の住民票の写し
登録支援機関が法人である場合に提出が必要です。
・マイナンバーの記載がないもの
・本籍地の記載があるもの
・特定技能外国人支援に関する業務の執行に直接的に関与しない役員に関しては、
住民票の写しに代えて、誓約書の提出でも可
・営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者が役員については、
当該役員及びその法定代理人の住民票の写し
〇登録支援機関・登録申請書類⑦:登録支援機関の役員に関する誓約書
参考様式 第2-7号 【PDF】【WORD】
・住民票の写しの提出を省略する役員がいる場合に提出が必要です。
〇登録支援機関・登録申請書類⑧:登録支援機関概要書
〇登録支援機関・登録申請書類⑨:登録支援機関誓約書
〇登録支援機関・登録申請書類⑩:支援責任者の就任承諾書及び誓約書
〇登録支援機関・登録申請書類⑪:支援責任者の履歴書
〇登録支援機関・登録申請書類⑫:支援担当者の就任承諾書及び誓約書
〇登録支援機関・登録申請書類⑬:支援担当者の履歴書
〇登録支援機関・登録申請書類⑭:支援委託手数料に係る説明書(予定費用)
〇登録支援機関・登録申請書類⑮:法施行規則第19条の21第3号ニに該当することの説明書
法施行規則第19条の21第3号ニに該当する場合のみ、提出が必要です。
〇登録支援機関・登録申請書類⑯:法施行規則第19条の21第3号ニに該当することの説明書に係る立証資料
法施行規則第19条の21第3号ニに該当する場合のみ、提出が必要です。
〇登録支援機関・登録申請書類⑰:返信用封筒(結果の通知送付用)
角形2号封筒 ※440円切手を貼付
・封筒に送付先(申請者名,担当者名等)を明記します。
・長形3号封筒(404円切手を貼付。この場合は結果は三つ折りとなります。)又はレターパック(赤)でも差し支えありません。
登録支援機関による支援内容とは?
登録支援機関による支援内容①:事前ガイダンス

雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前又は在留資格変更許可申請前に、労働条件・活動内容・入国手続・保証金徴収の有無等について、対面・テレビ電話等で説明します。
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登録支援機関による支援内容②:出入国する際の送迎

入国時に空港等と事業所又は住居への送迎 ・帰国時に空港の保安検査場までの送迎・同行をします。
登録支援機関による支援内容③:住居確保・生活に必要な契約支援

連帯保証人になる、社宅を提供する、銀行口座等の開設、携帯電話やライフライン の契約等を案内・各手続の補助をします。
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登録支援機関による支援内容④:生活オリエンテーション

円滑に社会生活を営めるよう日本 のルールやマナー、公共機関の利用 方法や連絡先、災害時の対応等の説明をします。
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登録支援機関による支援内容⑤:公的手続等への同行

必要に応じ住居地・社会保障・税などの手続の同行、書類作成の補助をします。
登録支援機関による支援内容⑥:日本語学習の機会の提供

日本語教室等の入学案内、日本語学習教材の情報提供等を行います。
登録支援機関による支援内容⑦:相談・苦情への対応

職場や生活上の相談・苦情等について、外国人が十分に理解することができる言語での対応、内容に応じた必要な助言、指導をします。
登録支援機関による支援内容⑧:日本人との交流促進

自治会等の地域住民との交流の場や、地域のお祭りなどの行事の案内や、参加の補助等をします。
登録支援機関による支援内容⑨:転職支援(人員整理等の場合)

受入れ側の都合により雇用契約を解除する場合の転職先を探す手伝いや、推薦状の作成等に加え、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続の情報の提供をします。
登録支援機関による支援内容⑩:定期的な面談・行政機関への通報

支援責任者等が外国人及びその上司等と定期的(3か月に1回以上)に面談し、労働基準 法違反等があれば通報します。
登録支援機関を利用するメリット
ここでは、企業が特定技能外国人の支援において登録支援機関を利用するメリットを3つご紹介します。
登録支援機関を利用するメリット①:高い語学力を要する業務を任せることで、人件費を抑えられる
特定技能外国人の支援は、外国人の日常生活がスムースに行われることをサポートする業務なので、とりわけ高い「専門性」を求められる仕事かといえばそうではないはずです。
しかしながら、特定技能外国人の支援業務は、その外国人のよく理解できる言語で行なうことが求められるため、高い「語学力」が求められます。
日本の税制や公的年金の仕組みや携帯電話や住宅の契約内容など、小難しい内容をわかりやすく外国人に説明してあげる必要があります。
これらの業務を社内の人材でまかなうとなれば、毎月相応の人件費が発生することになりますが、業務委託によって登録支援機関に任せるとこのコストを大きく抑えることができます。
登録支援機関に委託すると目に見える支払いがあるためコストに目がいきがちですが、社内人材の場合は毎月の給料のほかに社会保険料の負担も生じていますので、登録支援機関への委託がコスト高であるかコスト安であるかは社内状況によります。
登録支援機関を利用するメリット②:社内人材の教育や引継ぎのコストを抑えられる
特定技能外国人の生活支援は、採用企業にとっては完全にノンコア業務であり、コア業務ではありません。
自社にとってノウハウの積み上げが業績を左右するほどに重要であれば多少のコストをかけてでも自社で行なうメリットがありますが、そうでない場合には登録支援機関に丸投げしう方がメリットになることもあります。
もちろん特定技能外国人を受け入れるからには適切な支援を実施する必要がありますが、そのノウハウを社内に積み上げても、会社の業績には直結しないでしょう。
むしろそこは登録支援機関に任せることによって、自社にとって本当に必要な人材の教育にリソースを回すことができるようになります。
登録支援機関を利用するメリット③:社内人材を有効活用できる
自社の中にも特定技能外国人の生活支援を遂行できる人材はいるはずです。しかしながら、その人材が特定技能外国人の生活支援をしてしまえば、語学力を必要とし、かつ、専門性の高い他の業務に時間を割くことができなくなります。
登録支援機関を利用すれば、社内人材は、より生産性の高いコア業務に時間を振り向けることができるようになります。
登録支援機関を利用するデメリット
登録支援機関に特定外国人支援を委託するか否かを決定するときには、以下のデメリットもきちんと把握しておきましょう。
登録支援機関を利用するデメリット①:委託する人数によってはコストが大きくなる恐れがある
登録支援機関に委託する特定技能外国人の人数が増えてくると、登録支援機関に支払う費用が自社の採用コスト・教育コストより高くなる恐れがでてきます。
特に、すでに技能実習生を受け入れている企業が技能実習生の教育係を自社で採用しているようなケースでは、登録支援機関を利用せずに自社で対応した方がコスト安になることも実際に発生しています。
登録支援機関を利用するデメリット②:タイムリーで小回りの利く対応は難しい
社内であれば直ちに対応できることであっても、他社である登録支援機関に特定技能外国人の支援業務をお願いしているときには、今日明日ですぐに動けないこともあるでしょう。
そのことが、結果として支援の質を下げてしまう可能性もあるはずです。
社内であれば指揮命令系統を使って迅速に動けることでも、登録支援機関を利用しているときには、契約の範囲内での対応をお願いすることとなります。
登録支援機関を利用するデメリット③:社内のノウハウ構築や人材教育に結びつかない
特定技能外国人の支援を登録支援機関に全部委託できることは大きなメリットですが、一方で、支援業務に関するノウハウが御社に蓄積されることはありません。
ただし多くの企業にとって特定技能外国人の支援業務はノンコア業務であるはずなので、ノウハウが蓄積されないデメリットは小さいでしょう。
登録支援機関による届出(随時報告・定期報告)


登録事項変更に関する届出(入管法19条の27第1項)
登録支援機関は出入国在留管理庁に登録した事項に変更があったときは、
変更の日から14日以内に、
登録事項変更に関する届出書を、
登録支援機関の住所地を管轄する出入国在留管理局に
持参又は郵送の方法で提出します。
支援業務の休止又は廃止に係る届出(入管法19条の29第1項)
登録支援機関は支援業務を休廃止したときは、
休廃止の日から14日以内に、
支援業務の休止又は廃止に係る届出書を、
登録支援機関の住所地を管轄する出入国在留管理局に
持参又は郵送の方法で提出します。
支援業務の再開に係る届出
登録支援機関は休止した支援業務を再開しようとするときは、
再開予定日の1か月前までに、
支援業務の再開に係る届出書を、
登録支援機関の住所地を管轄する出入国在留管理局に
持参又は郵送の方法で提出します。
支援実施状況に係る届出(入管法19条の30第2項)
登録支援機関は、四半期ごとに翌四半期の初日から14日以内に、
支援全部委託を受けた特定技能所属機関の本店所在地を管轄する出入国在留管理局に
支援実施状況に係る届出書を提出して届出を行います。
登録支援機関が対象期間内に特定技能所属機関と支援全部委託契約を締結していないときは、届出を行う必要はありません(要領)。
登録支援機関の一覧
登録支援機関の一覧は、出入国在留管理庁の「登録支援機関登録簿」を確認しましょう。