年金というとご自分が年を取ったときにそのお金で暮らす「老齢年金」ばかりに目が行きがちですが、交通事故で障害を負った時などの「障害年金」も非常に重要な給付となります。
今は若くて老後に備える気にはなれなくても、明日交通事故にあう可能性は誰にでもあります。
国民年金を納めていれば障害年金を受給できますが、交通事故で寝たきりになってしまったとき、障害年金を受給できないと大変なことになってしまうでしょう。
老齢年金の部分については、確かに将来日本に住む気持ちがない外国人のかたにとっては払い損になることを気にされる向きもあるかもしれません。
しかしながら、外国人の母国と日本が社会保障協定を結んでいれば、年金加入期間の通算をすることができる場合もありますし、日本から母国へ帰国したのちに支払った保険料の返金を受ける制度も用意されています。
この記事では、20歳以上の外国人がかならず加入しなければならない国民年金についてわかりやすく解説します。
目次
国民年金のあらまし

国民年金は老齢年金のほか、障害年金と遺族年金とで構成されています。
遠い老後に備えるだけでなく、明日の交通事故の備えにもなるわけですから、若い方にも関係のある重要な制度となっています。
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方で、厚生年金保険に加入していない方は、すべて国民年金の第1号または第3号被保険者となります。
また、国民年金第1号被保険者は毎月、保険料を納めることが必要です。
外国人はいつから国民年金に加入すればよいの?
外国人で、20歳未満から日本に住んでいる方は、20歳になったら国民年金に加入します。
外国人で、20歳以降に来日された方は、「日本に上陸した日」から国民年金に加入します。
外国人の国民年金への加入手続きは?
外国人による国民年金加入手続きの概要はつぎのとおりです。
詳細は市区町村役場の指示に従ってください。
必要なもの
・国民年金被保険者関係(申出)届
・在留カード(本人確認書類)
・日本に上陸した日が分かるパスポート等
(代理人)
・委任状
・代理人の本人確認書類
届出期間
・事由が生じた日(上陸日)から14日以内
届出場所
・市区町村役場の保険年金課
留学生も国民年金に加入するの?
日本人学生も20歳以上になると国民年金の加入義務が生じるのと同様に、日本に住む留学生も国民年金への加入義務が生じます。
くどいようですが、国民年金の役割は老後の備えだけではなく交通事故等への備えでもあるので、留学生の周りにいらっしゃる日本人の方はその重要性をしっかりと伝えてあげましょう。
ところで、日本人学生も外国人留学生も、一定の要件をみたす場合には「学生納付特例制度」という国民年金保険料の納付が猶予される制度を利用することができます。
対象者は大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校、専修学校、各種学校に在籍する学生等で、ご本人の前年所得が基準以下の方です。
前年所得の基準額は、128万円 扶養親族等の数×38万円により計算します。
学生納付特例制度の申請方法
住民登録している市町村役場の国民年金窓口で、申請書を提出して行います。
申請の際には、学生証など学生であることを証明するものが必要です。
配偶者の国民年金への加入はどのようにするの?
たとえば会社にお勤めの日本人が外国人配偶者とご結婚されて、日本人の配偶者等の在留資格をもつ外国人配偶者を扶養に入れるにはどうしたらよいのでしょうか。
厚生年金保険の被保険者に外国人配偶者が扶養されているときには、被保険者が勤務する会社を経由して、国民年金に加入することとなります。これを国民年金の第3号被保険者といいます。
外国人配偶者が国民年金の第3号被保険者となるときは、外国人配偶者自身が保険料を支払うことはありません。これを俗に「扶養に入る」といいます。
扶養に入れるには一定の要件を満たす必要があります。
・日本国内に住んでいること。
・20歳以上60歳未満であること。
・厚生年金保険に加入する配偶者に扶養されており、原則として年収が130万円未満であること。
扶養される外国人配偶者の国民年金への加入についての詳細は、リンク先の別記事をご確認ください。
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・外国人を社会保険の扶養に入れる手続きや条件について教えてください。
外国人が国民年金の未加入を放置するとどうなるの?
国民年金に未加入であれば、老齢年金、障害年金、死亡年金を受けることができないことは当然ですが、外国人が国民年金や国民健康保険料を支払っていないと、永住許可申請時に納付状況を証明しなければならないため、大きく不許可に傾きます。
それまでの滞納分を申請直前にまとめて支払ってから永住許可申請をしても不許可となる可能性が極めて高いです。なぜなら、永住申請時に滞納がないことが審査項目なのではなく、過去に滞納をしたことがなかったか、が審査項目であるからです。
永住許可申請では社会保険料の領収証書などで、納期限に遅れることなく適時に支払ったことの証明が求められます。
この記事を執筆している時点では、特定技能の在留資格を除いて、在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請の結果に影響はありませんが、たとえば日本人の配偶者等の在留資格の期間更新時などにおいて、世帯の収入が基準ギリギリである場合に、世帯がきちんと社会保険料を納めているかどうか、追加資料が求められることは時々あります。
外国人の国民年金は免除されることもあるの?
国民年金は、外国人のために特別に用意された免除制度というものはありません。しかしながら、日本人と同じく、要件に合致すれば免除を受けることができます。
国民年金保険料の免除額は、①全額免除、②一部免除(4分の3、半額、4分の1)があり、審査によって1か月単位で免除されます。
国民年金の「免除」手続きをするメリット
・保険料を免除された期間は、老齢年金を受け取る際に1/2(税金分)受け取れます。
・保険料免除を受けた期間中に、不慮の事態が発生した場合、障害年金や遺族年金を受け取ることができます。
国民年金の「免除」手続きをする役所
住民登録をしている市区町村役場の国民年金担当窓口へ申請書を提出します。
国民年金の「免除」手続きに必要な書類
<必ず必要なもの>
・年金手帳 または 基礎年金番号通知書
<場合により必要なもの>
・前年(または前々年)所得を証明する書類
・雇用保険受給資格者証の写しまたは雇用保険被保険者離職票等の写し
外国人が帰国するときには返金されるの?
外国人が、国民年金、厚生年金保険の被保険者資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。
ただし返金されるのはこれまでに支払った金額の全額ではありません。なぜなら、老齢年金については確かに払い損の側面はありますが、日本滞在中に障害年金や死亡年金の受給権も有していたからです。
脱退一時金を請求する条件
① 日本国籍を有していない
② 国民年金の保険料納付済期間等の月数又は厚生年金保険(共済組合等に加入していた期間を含む)が6月以上ある
③ 日本に住所を有していない
④ 年金(障害手当金を含む)を受ける権利を有したことがない
脱退一時金を請求する時の提出書類
・脱退一時金請求書(国民年金/厚生年金保険)
・パスポートの写し(氏名、生年月日、国籍、署名、在留資格が確認できるページ)
・日本国内に住所を有しなくなったことが確認できる書類(住民票の除票の写し等)
・「銀行名」「支店名」「支店の所在地」「口座番号」及び「請求者本人の口座名義」であることが確認できる書類
脱退一時金の支給額や請求手続きの詳細については、リンク先の別記事をご用意していますので、詳細はそちらをご確認ください。
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外国人が国民年金を受給するにはどうしたらよいの?
外国人が日本で国民年金を支払い続け、老後に母国に帰国したら、日本の老齢年金は受給できるのしょうか。
老齢年金は、10年以上の受給資格期間がある方が65歳から受給できます。
日本の老齢年金を受給するためには日本に居住していなければならないというルールはありませんので、受給時に海外に住んでいても年金を受け取ることができます。
このことは、定年退職後に日本の年金をもらいながらマレーシアなどに海外移住する日本人のシニア世代がいらっしゃることからも、ご想像いただけるはずです。
しかしながら、老齢年金を受け取るためには、日本に住んでいようと海外で暮らしていようと年金の請求手続きが必要です。
年金請求書に必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、添付書類とともに年金事務所に提出します。