【強制送還】とはなんですか? 費用やその後の再入国について

強制送還された外国人

日本で入管法に違反する行為をしたり、刑事法令に違反すると、日本から強制的に退去させられることがあり、これを強制送還といいます。英語ではいくつかの言い方がありますが、入管は「deportation」の語をつかうことが多いです。

この記事では、強制送還の意味から始め、どのようなときに強制送還されてしまうのか、強制送還の費用はだれが負担するのか、強制送還される先はどこになるのか、強制送還された後はどうなるのか、再入国は可能なのかなどについてくわしくご説明します。

強制送還とは?

強制送還とは一般的によく使われる用語ですが、法律用語ではなく、入管法では退去強制(たいきょきょうせい)と呼ばれています。国外追放、国外退去と呼ばれることもあります。

強制送還は入管法に定められた行政処分の一つで、日本に滞在している外国人を強制的に日本から退去させることをいいます。

出入国在留管理局の統計によれば、毎年の被強制送還者の数は、2015年に6,174名、2016年に7,014名、2017年に8,145名、2018年に9,369名、2019年に9,597名と右肩上がりに増加しています。

強制送還
送還風景(出所)出入国在留管理局

強制送還の摘発から送還までの流れ

強制送還の手続きは、入国警備官が法律で列挙されている「退去強制事由」に該当する疑いがある外国人を発見して身柄を確保すること(摘発)からはじまります。
摘発は警察と合同で行われることもあり、多くは収容令書に基づいて、入管施設に収容されることとなります。
収容された外国人が、請求又は職権により、一時的に身柄の拘束を解かれる措置のことを仮放免といいます。

その間も法定の「退去強制手続き」は進んでいき、最終段階で退去強制令書が発布されると、日本の国外へ送還されることとなります。

強制送還の費用(旅費)

強制送還の費用は、出入国在留管理局の統計によれば、ほとんど(93.4%)が外国人本人による負担(自費出国)となっています。このほか、国費送還、航空会社等の運送業者の費用による送還があります。

自費出国

強制送還という言葉の語感からも、また入管法の送還に関する規定(入管法第53条)の書きぶりからも「嫌がっているものを無理やり飛行機に乗せる」というイメージがありますが、実際には全体の93.4%(2019年)が自費で、かつ、みずから進んで飛行機に乗り込んで出国していきます。

自費出国は、自ら費用負担をするというだけでなく、自ら退去する意思があることが必要で、本人の申請を受けて、入国者収容所長又は主任審査官が許可することによって可能になります。
したがって自費での出国は本人の意思が無いのに強制できるものではなく(この場合は国費送還となります。)、一方で、本人の意思がある場合でも入管の許可なく自由にできるものでもありません。

強制送還,費用,
(出所)出入国在留管理局

(退去強制令書の執行)
第五十二条 

4 前項の場合において、退去強制令書の発付を受けた者が、自らの負担により、自ら本邦を退去しようとするときは、入国者収容所長又は主任審査官は、その者の申請に基づき、これを許可することができる。
この場合においては、退去強制令書の記載及び次条の規定にかかわらず、当該申請に基づき、その者の送還先を定めることができる。

国費送還

国費送還とは、入国警備官が被退去強制者を国費によって旅費を負担して送還することをいいます。
送還される本人が旅費の全額を工面できない場合や、本人が送還を拒否しており自ら退去する意思が無い場合に、実行されます。
全体に占める国費送還の割合は5.4%(2019年)と多くはありません。

送還先までの同行の有無

退去する意思はあるものの帰国の費用を本人が工面できない場合には、入国警備官が送還先まで同行することはしませんが、本人に国外退去する意思がない場合には、入国警備官が送還先まで同行することとなります。

個別送還と集団送還

入国警備官の同行の態様としては、特定の個人を民間の旅客機に乗せて同行する方法(個別送還)と、同じ国籍の被退去強制者をまとめてチャーター機に乗せて同行する方法(集団送還)とがあります。

入管法第59条による送還(運送業者の責任と費用による送還)

入管法59条に規定されている、外国人が乗ってきた船舶等の長又はその船舶等を運航する運送会社が費用負担しなければならない例外的な送還です。
運送業者とは、強制送還の対象となっている外国人を日本に運んできた航空会社や船会社などを意味します。
2019年中に運送業者の費用負担で送還されたのは72人であり、全体に占める割合は0.8%でした。

例えば、その者に退去強制事由があることを明らかに知っていたのにもかかわらず、その外国人を日本に連れてきて上陸させたのであれば、送還費用を運送会社に負担させても不合理はないと言えます(入管法59条3号)。

(送還の義務)
第五十九条
 次の各号のいずれかに該当する外国人が乗つてきた船舶等の長又はその船舶等を運航する運送業者は、
当該外国人をその船舶等又は当該運送業者に属する他の船舶等により、その責任と費用で、速やかに本邦外の地域に送還しなければならない。
一 第三章第一節又は第二節の規定により上陸を拒否された者
二 第二十四条第五号から第六号の四までのいずれかに該当して本邦からの退去強制を受けた者
三 前号に規定する者を除き、上陸後五年以内に、第二十四条各号のいずれかに該当して退去強制を受けた者のうち、その者の上陸のときに当該船舶等の長又は運送業者がその者について退去強制の理由となつた事実があることを明らかに知つていたと認められるもの

どんなときに強制送還となるの?(退去強制事由)

以下では、代表的な強制送還となる条件(退去強制事由)をピックアップしてご説明します。一覧ですべての事由を確認したい方はリンク先の別記事をご参照ください。

入管法違反による強制送還(退去強制事由)

不法入国者(1号)・・・376名(2019年)
不法上陸者(2号)・・・67名(2019年)
・在留資格を取り消された者(2号の2)・・・102名(2019年)
・在留資格を取り消された後に指定された出国期間を徒過しても出国しない者(2号の3)
  ・・・167名(2019年)
・他人の入国・在留を助けるために虚偽・偽変造の文書等を作成・行使・提供などした者
  (3号)・・・11名(2019年)
・不法就労助長者(3号の4)・・・34名(2019年)
在留カード等の偽変造及び行使又は他人名義の在留カードの行使に関わった者
  (3号の5)・・・143名(2019年)
専従資格外活動者(4号イ)・・・281名(2019年)
不法残留者(4号ロ)・・・7,710名(2019年)
・旅券法違反者(4号二)
・不法入国幇助者(4号ホ)
・資格外活動違反で禁固刑以上に処せられた者(4号へ)
・不法入国幇助者・不法上陸幇助者・在留資格等不正取得幇助者(4号ル)・・・1名(2019年)
・在留カードにかかる手続き違反により懲役刑に処せられた者(4号の4)
・仮上陸許可条件違反・逃亡者(5号)
・退去命令に従わなかった者(5号の2)・・・78名(2019年)
・特例上陸許可による不法残留者(6号)・・・105名(2019年)
・船舶観光上陸許可条件違反・逃亡者(6号の2)・・・6名(2019年)
・船舶観光上陸許可による不法残留者(6号の3)
・数次乗員上陸許可を取り消された後に指定された出国期間を経過しても出国しない者
  (6号の4)
・在留資格未取得による不法残留者(7号)・・・58名(2019年)
・出国命令にかかる指定期間徒過による不法残留者(8号)・・・27名(2019年)
・出国命令を取り消された者(9号)
・難民認定を取り消された者(10号)

刑罰法令違反による強制送還(退去強制事由)

・少年法違反で3年超の懲役または禁錮刑に処せられた者(4号ト)
薬物事犯で刑に処せられた者(4号チ)・・・162名(2019年)
1年超の懲役または禁錮刑に処せられた者(4号リ)・・・89名(2019年)
活動系の在留資格を有する者で懲役または禁錮刑に処せられた者(4号の2)
  ・・・80名(2019年)

社会秩序や公安上の問題による強制送還(退去強制事由)

・テロリストおよび国際犯罪組織構成員(3号の2、3号の3)
売春またはその周旋、勧誘等を行った者(4号ヌ)・・・21名(2019年)
・人身取引に関与した者(4号ハ)
・フーリガン行為者(4号の3)
・日本国憲法又は政府を暴力で破壊することを目的とする政党・団体を結成し、又はこれに加入している者(4号オ)
・無政府主義的な政党・団体を結成し、又はこれに加入している者(4号ワ)
・4号オ・ワに規定する政党・団体の目的達成するため、印刷物・映画・文書図画を作成・頒布・展示する者(4号カ)
・法務大臣が日本の利益又は公安を害する行為を行ったと認定する者(4号ヨ)

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 ・退去強制事由一覧

強制送還のその後はどうなるの?

強制送還のその後:送還先について

入管法は、送還先は「その者の国籍又は市民権の属する国」が原則としています(入管法53条1項)。
国際法上も、相手国は追放された自国民を受け入れる義務があるとされているためですが、まれにこれに協力しない国があります。たとえばイランがそれで、このため日本はそのペナルティとして、特定技能外国人を受け入れない唯一の国としてイランを指定しています。

本国送還ができないときには、本人の希望によりそれ以外の適当な国へ送還することとされています(入管法53条2項)。
ただし本国ではないため事前にその国の査証を取得するなどの対応が必要となることがあります。

①日本に入国する直前に居住していた国
②日本に入国する前に居住していたことのある国
③日本に向けて船舶等に乗った港の属する国
④出生地の属する国
⑤出生時にその出生地の属していた国
⑥その他の国

強制送還のその後:上陸拒否期間

強制送還がなされた理由に応じて、その後に入国が拒否される期間が決められています。

上陸拒否事由 上陸拒否期間 入管法5条1項
1年以上の懲役または禁錮刑を受けたことがある(執行猶予を含む) 無期限 4号
薬物事犯で有罪判決を受けたことがある 無期限 5号
売春業務に従事したことがある 無期限 7号
貧困者等で公共の負担になるおそれがある 無期限 3号
過去に1回、退去強制を受けたことがある 5年 9号ロ
過去に2回以上、退去強制を受けたことがある 10年 9号ハ
過去に出国命令を受けたことがある 1年 9号ニ
過去に薬物不法所持等を理由に退去強制を受けたことがある 1年 9号イ

強制送還を拒否することはできるの?

退去強制手続きの途中での拒否の意思表示

強制送還の手続きは、ファーストステップとして入国審査官による違反審査があり(45条)、退去強制対象者に該当するとの認定(47条3項)がなされたときには、これに異議を申し立てることができます(48条1項)。

異議を申し立てると、セカンドステップとして特別審理官による口頭審理が行われます。ここで、入国審査官による認定に誤りがないと判定されたときには(48条8項)、これに異議を申し出ることができます(49条1項)。

異議を申し出ると、サードステップとして法務大臣による裁決が行なわれます(49条)。ここで異議の申出に理由がなく、かつ、特別に在留を許可すべき事情もないとされたとき(49条6項)には、主任審査官が退去強制令書を発布します。

強制送還の手続きは司法手続きではなく行政手続きですが、入国審査官の認定に対しては、特別審理官と法務大臣に異議を申し立てるチャンスがあり、その意味では3審制に近い制度となっています。

退去強制令書が発付された後の拒否の意思表示

法務大臣の裁決および主任審査官による退去強制令書の発付は行政処分なので、これに納得がいかないときには、これらの取消訴訟を提起することができます。
取消訴訟の提起のみでは行政処分の執行は停止しないので、あわせて退去強制令書発付処分の執行停止を申し立てます。

東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート行政書士事務所を開業。業歴は10年を超える。専門は入管法、国籍法。
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