知らなかったときでも【不法就労助長罪】で逮捕されますか? 【徹底解説】

不法就労助長罪の疑いがはれた外国人

更新日 2021年6月22日

不法就労助長罪は犯罪のひとつですが、犯罪には、故意がなければ処罰されない故意犯と、故意がなくても過失があれば処罰される過失犯とがあります。

不法就労助長罪はかつて「知らなかった」と主張すれば処罰を免れた時代がありましたが、その後の法改正を経て今は「知らなかった」という言い逃れができなくなっています

外国人を雇用するときに不法就労者である事実を知らなかったとしても、在留カードを確認していないなどの過失がある場合には、処罰を免れません。立件が容易であるため、初犯であることや証拠不十分を理由に不起訴になるケースは少なく判例も多数でてきています。

この記事では、外国人が不法就労をしたときなどに事業主側が問われることになる不法就労助長罪についてくわしく解説します。

不法就労の3類型とは?

外国人による不法就労にはつぎの3類型があり、出入国在留管理局も概ねつぎのように分類しています。
これらの不法就労を「助長」させたと判断されると事業主も罪に問われることになりますので、まずは何が不法就労になるのかをきちんと理解しましょう。

助長の対象である「不法就労」をまず把握することが大切ですよね。

不法就労の類型①:不法滞在者が働く

不法滞在者とは、そもそも日本に滞在していること自体が違法である外国人のことをいいます。

不法滞在者には2つのパターンがあります。

1.不法残留者:もともとは合法的な滞在者であったが在留期限が切れてもなお日本に滞在している外国人(いわゆるオーバーステイ)
2.不法入国者:日本に上陸した当初から違法であった外国人(密入国した外国人や偽造パスポートで入国した外国人など)

これらの外国人はそもそも日本に滞在していること自体が違法ですので、日本で働くことも当然に違法であることから不法就労となります。

不法就労の類型②:合法滞在者が、働く許可を受けていないのに働く

この類型は、外国人が日本に滞在していること自体は合法だが、働く許可を得てないのに働いているため不法就労となるパターンです。

例えば、次の在留資格をお持ちの方は原則として就労が禁止されていますので、別途、資格外活動許可という就労の許可を得なければ不法就労となります。資格外活動許可については「資格外活動許可とは」でくわしく解説しています。

【原則として就労が認められていない在留資格】

・日本文化の研究者等に付与される在留資格「文化活動」
・観光客や知人訪問者、会議参加者等に付与される在留資格「短期滞在」
・大学,専門学校,日本語学校等の学生に付与される在留資格「留学」
・研修生に付与される在留資格「研修」
・就労資格等で在留する外国人の配偶者,子に付与される在留資格「家族滞在」

不法就労の類型③:合法滞在者が、許された範囲を超えて働く

この類型は外国人が日本に滞在していること自体は合法であり、かつ、働く許可(就労可能な在留資格または資格外活動許可)も得ているが、許可の範囲を超えて働いているため不法就労となるパターンです。

例えば、資格外活動許可を受けている留学生は、合法的な滞在者であり、かつ、週28時間までは合法的に働くことができますが、週28時間を超えて働けば許された範囲を超え不法就労となります。資格外活動許可については「資格外活動許可とは」でくわしく解説しています。

不法就労にはいろいろなパターンがあるのですね

不法就労助長の3類型とは?

不法就労は外国人による犯罪ですが、外国人だけでは完結することができない犯罪です。なぜなら、事業主がその外国人を雇用せず、仕事を与えなければ、不法就労したくでもできないからです。

そこで法律は、不法就労をした外国人だけでなく、不法就労をさせた事業主も罰することとし、入管法73条の2において不法就労助長者の3類型をあげています。

不法就労助長の類型①:事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者

外国人が働く企業を念頭においた規定です。

・「事業活動」とは、自ら運営し又は従業員として従事する事業の遂行に必要な活動を意味します。

・「不法就労活動」とは、資格外活動または不法入国者、不法上陸者、不法残留者が行う報酬その他の収入を伴う活動を意味します。

・不法就労活動を「させた」とは、当該外国人との間で対人関係上優位な立場にあることを利用して、その外国人に対し不法就労活動を行うべく指示等の働きかけをすることを意味します。

不法就労外国人の雇用主や監督的立場にある従業員は、対人関係上優位な立場にあり、かつ、仕事の指示をしていることから、類型①に端的に該当することが多いでしょう。

不法就労助長の類型②:外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者

不法就労のブローカーを念頭においた規定です。

・「自己の支配下に置く」とは、指示・従属の関係により外国人の意思・行動を左右できる状況に置き、自己の影響下から離脱することを困難にさせることをいいます。

パスポートを取り上げたり見張りをつけたりするなどの物理的な強制がある場合はもちろんのこと、心理的ないし経済的な手段により自己の影響下から離脱することを困難にさせることも含まれます。

不法就労助長の類型③:業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

不法就労のブローカーを念頭においた規定です。

・「業として」とは、反復継続して又は反復継続する意思をもってという意味です。営利目的でなく、対価を得ていない場合であっても該当します。
・「あっせん」とは、交渉が円滑に行われるために仲介することをいいます。最終的に交渉が成立しなかったとしても、交渉成立の可能性が相当程度生じるまで仲介を行なえば、あっせんは既遂に達します。

外国人が働いている企業は、①の類型にあたりますね

不法就労助長罪で罰せられるのは誰?(入管法76条の2)

法人の代表者または法人の従業者が不法就労助長罪を犯したときには、その行為者である代表者または従業者が罰せられるほか、
その法人についても300万円以下の罰金を科されることがあります(両罰規定)。

実際に誰が処罰されるかはケースバイケースですが、法人代表者法人の従業員法人が処罰の対象です。

不法就労助長罪に関するニュースをインターネットで検索されると、法人の代表者が逮捕されているケースと、会社の従業員が逮捕されているケースの両方を確認できます。

大企業であれば社長が数千名いる従業員全員の事情を把握しているわけがなく社員が処罰されるでしょうし、中小企業であれば代表者が逮捕される可能性が高いでしょう。

なお、2021年6月、不法残留(オーバーステイ)の外国人を違法に働かせた「不法就労助長罪」の疑いで、ウーバーイーツの当時の代表者とコンプライアンス部門長であった従業員、そして法人としての同社が書類送検されたと報道されました。このケースでは、法人代表者、従業員、法人と三者すべてが立件されたことになります。

大きな会社では、会社の従業員が逮捕されることもあるのですね

不法就労助長罪の罰則は?

法人の代表者または法人の従業者が処罰されるときは、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
法人が処罰されるときは、300万円以下の罰金となります。

罰金以上の刑に処せられた場合は、前科調書に記載され検察庁に保存されます。これがいわゆる「前科」であり、たとえ罰金刑であっても本人が死亡するまで一生残ります(犯歴事務規程18条)。
初犯であることなどを理由に執行猶予が付くこともあるかもしれませんが、有罪判決により刑を言い渡された事実には変わりませんので「前科」として扱われます。

「知らなかった」としても不法就労助長罪が成立するワケ

入管法73条の2第2項は次のように規定し、「知らないことを理由」として処罰を免れることができないとしています。

(条文)
前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。

不法就労助長罪で逮捕されますか?

警察などの捜査当局が犯罪の被疑者や違法行為を特定することを「検挙」といいます。

検挙されたあと、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されたときには逮捕されることになりますし、そのおそれがないと判断されれば任意同行在宅での取り調べとなることもあります。

したがって、不法就労助長罪で逮捕されるか逮捕されないかは、そのときの警察の判断次第なのですが、過去に不法就労助長罪で逮捕された雇用主や監督的立場にある従業員が沢山いることは、不法就労助長罪のニュースをインターネットで検索していただければご確認いただけるでしょう。

逮捕されると最長20日間勾留されるだけでなく、不法就労をさせていた外国人が複数名にわたるときには、不法就労助長罪は雇用した外国人ごとに成立するため、再逮捕が繰り返されて数カ月間勾留されるおそれがあります。

証拠不十分であれば不起訴になることもあります。しかし不法就労助長罪は犯罪の立証が容易であることが多く、起訴されたのち有罪判決で刑が言い渡されれば前科となります。
初犯であるときは執行猶予が付くこともありますが、執行猶予とはあくまでも刑の執行が猶予されただけなので、同じく前科として死ぬまで記録されます(犯歴事務規程18条)。

犯歴事務規程18条(犯歴の抹消)
犯歴担当事務官は,電子計算機又は犯歴票等により把握されている有罪の裁判を受けた者が死亡したことを知つたときは,次の各号に掲げる手続をする。

不法就労助長罪を回避するために

在留カードの記載内容を確認する

まずは在留カードの記載内容を確認し、自社で就労が可能な人材であるか確認をします。

不法就労助長罪を防止する在留カード確認
出所:出入国在留管理庁

在留カードの真偽を確認する

在留カードの記載内容で不法就労でないことが確認できたとしても、まだ安心はできません。偽造の在留カードが出回っているからです。
そこで、下記を参考にして、在留カードが偽造ではないか確認しましょう。

不法就労助長罪を防止する指定書の確認
出所:出入国在留管理庁

在留カードでは分からない就労の可否を確認する

特定活動の在留資格では、在留カードだけでは就労が可能であるかを確認することができません。
難民申請中や卒業した留学生で現在就職活動中の外国人などはこの特定活動の在留資格であることが多く、就労できる外国人とできない外国人がいますので十分に注意しましょう。

求職者の中に特定活動ビザをお持ちの方がいたときには、特殊な在留資格ですので、別記事「特定活動ビザ」を確認してください。

この場合は、パスポートにホチキスで貼付された「指定書」の記載内容を確認します。
パスポートにホチキスで貼付された「指定書」につぎの図のように書かれていたら、原則として就労することが許可されていませんから、雇用すれば不法就労助長罪となります。

ただし就職活動のための特定活動ビザ内定待機のための特定活動ビザをお持ちの方などは、別に資格外活動許可を得ていればその範囲内ではたらくことができます。

不法就労助長罪を防止する指定書の確認
出所:出入国在留管理庁

派遣先事業者に不法就労助長罪が成立するケース

派遣法35条は、派遣元事業主が労働者派遣をするときには、6つの事項を派遣先に通知しなければならないとしていますが、それ以外の事項については通知の義務はありません。

しかしながら、派遣先が外国人本人との会話の内容から直接的に不法就労者であることを知ることとなったときなど一定の場合には、不法就労助長罪が成立しえますので注意が必要です。

まとめ

もし不法就労助長罪で逮捕されるようなことになればニュースで報道されてしまい、社会的な信用を失ってしまうでしょう。

人手不足の解消に外国人材はとても魅力的ですが、その採用活動は日本人を採用するときと比べより慎重でなければなりません。

知らなかったというエクスキューズは法律の条文で封じられていますから、入管法の専門家のアドバイスを受けながら適切な採用活動を心がけてください。

外国人はありがたい存在ですが、足元をすくわれないように気を付けたいですね

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東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート行政書士事務所を開業。業歴は10年を超える。専門は入管法、国籍法。
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