留学生のアルバイトと「常勤」の定義、そしてビザ更新、退去強制との関係について【徹底解説】

更新日 2021年6月16日

はじめに

毎年、留学ビザの更新の時期になると、アルバイトを法定の時間を超過して働いたことが原因で留学ビザの更新が許可されず、母国に帰国することになった留学生からの相談が持ち込まれます。
みんなやっているから少しくらい時間超過してアルバイトしても大丈夫だろうと思いがちですが、週28時間を超えてはたらくと、限りなく「常勤」の概念に近づきます

出入国在留管理局が法定時間を超過した留学生のビザ更新を容赦なく不許可にするのは、週28時間という時間制限は、「常勤」概念のギリギリ手前に引いたラインだからです。

留学ビザの更新が不許可になってしまうと、通常は帰国する以外の道は残されていません。
なぜなら他の在留資格に「変更」したくても、ビザ変更にはビザ更新と同じく「素行の善良性」が求められるため、ビザ更新が認められないときには、高い確率でビザ変更も認められないからです。

この記事では、留学生のアルバイトに関する法的な規制について、「常勤」概念を中心にひも解いていきます。

なお、留学生のアルバイト(資格外活動許可)の全般については、別記事「資格外活動許可とは」でくわしく解説しています。

留学生のアルバイトにかんする入管法上の制約

留学ビザは原則として就労が禁止される在留資格ですが、法務大臣から「資格外活動許可」を取得すれば、時間制約はあるものの、ほとんどの業種・職種でアルバイトが可能背です。

時間の制限

留学生のアルバイトは、1週間につき28時間まですることができます。夏休みなどの長期休暇は学校がありませんので、1日8時間以内にまでアルバイトが可能です。
長期休暇中のアルバイト可能時間が1日8時間以内に設定されているのは、労働基準法上の労働時間が1日に8時間以内なのでそれと同じに設定されています。

ただしあまり知られていませんが、留学生がインターンシップに参加するときなど特別な場合には、資格外活動許可の「個別許可」を得て週28時間を超えて働くことも可能です。この点については別記事「資格外活動許可の個別許可」でくわしく解説しています。

業種の制限

留学生のアルバイトは風俗営業の営業所で働いたり、風俗営業関連の業種で働くことができませんが、その他の業種であれば他の法令に違反しない限りどの業種でも可能です。
風俗営業とは性風俗にかぎられませんので、キャバクラ、ガールズバー、アダルトショップ、パチンコ店、マージャン店などが含まれます。

「常勤」と「非常勤」を分ける32時間ルール

留学生アルバイト
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留学生のアルバイトについて定めている入管法に限らず、日本では一般的に週当たり32時間の労働を、「常勤」と「非常勤」の分かれ目に設定しています

たとえば大きな病院に行くと、「常勤」医師と「非常勤」医師がいると思いますが、厚生労働省の定義では、週に32時間以上働く医師を「常勤医師」としています。
留学生とまったく関係のない日本人医師の「常勤性」を判定する際にも、週30時間前後という基準が使われていることが分かります。

学業が本分の留学生に「常勤」の就労を認めることはできないことから、週32時間から4時間を差し引いて、週28時間という時間設定がなされているのです。
したがって少しくらい良いだろうと週28時間を超えて週32時間以上のアルバイトをしていると、もはや常勤の従業員としてフルタイム就労していることとなります。

28時間という制限は、「常勤」のわずか4時間手前に設定されているのね。

法定の時間を超過してアルバイトするとどうなるのか

入管法が定めた留学生のアルバイトに関するルール(時間制限・業種制限)に違反することを「資格外活動」といいます。

まず、資格外活動を「専ら」行なっていたと明らかに認められるときには退去強制事由であるとともに、罰則(3年以下の懲役もしくは禁錮又は300万円以下の罰金)が適用されます。
退去強制事由にあたると判断されると、退去強制手続きに乗せられて、在留期間の途中(すなわち学年の途中)であろうが帰国することとなります。

一方で資格外活動を「専ら」していたと言えないときには退去強制にはなりませんが、罰則(1年以下の懲役もしくは禁錮又は200万円以下の罰金)の対象になります。
このときは退去強制事由ではないので在留期間の途中(すなわち学年の途中)で帰国することにはなりませんが、素行が善良でないことを理由に、次回のビザ更新が許可されないことがほとんどです。
つまり、学年の区切りがついたところで、次の学年に進級することができずに帰国することとなります。

留学ビザの更新のさいに必要な「素行の善良性」

留学生の法定のアルバイト時間超過は、超過分が「不法就労」であり、資格外活動罪という犯罪ですので、それが入管の把握するところとなれば、留学ビザが更新される見込みはとても薄くなります。
実際、毎年ビザ更新の記事になると、留学ビザの更新が認められずに母国に帰国することになった留学生が多く発生します。

留学ビザの更新に限らず、すべての在留資格の在留期間更新申請においては、「素行の善良性」が要件の1つであるため、資格外活動罪という犯罪をおかしてしまうと、なかなか許可は難しくなります。

留学ビザの更新が不許可になるときは、他のビザへの変更も難しい

留学ビザの更新申請が不許可になったので、他の在留資格への変更申請をしようとしても、結果はなかなか厳しいものになるはずです。なぜなら、「素行の善良性」が許可の要件になるのはビザ更新だけでなくビザ変更でも同じだからです。

ただし退去強制となって帰国するときは5年の入国禁止期間がありますが、ビザ更新の不許可で帰国するときは法定の入国禁止期間というものはありませんので、
一度帰国してから在留資格認定証明書交付申請で別の在留資格にチャレンジすることは可能です。

まとめ

筆者は、身近な留学生が法定のアルバイト時間を超過して働いているのではないかとの疑いをもったときには、それが資格外活動罪という「犯罪」であるとあえて伝えるようにしています。
ちょっと煩い大人と思われようとも、その留学生のビザ更新が認められずに、涙ながらに帰国する姿を見たくないからです。

なお留学生にアルバイトとして働いてもらう会社・お店の立場であれば、アドバイスなどという他人事では済まされません。
留学生の「不法就労」を手助けしたとして、使用者自身が「不法就労助長罪」に問われることとなります。

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東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート行政書士事務所を開業。業歴は10年を超える。専門は入管法、国籍法。
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