オーバーステイの外国人と結婚し在留特別許可をもらうときの注意点について【徹底解説】

更新日 2021年6月16日

はじめに

最新の統計によれば、日本においてオーバーステイをしている外国人は、なんと8万6千人もいらっしゃいます。

オーバーステイの目的は無職でぶらぶら過ごすためではなく日本での就労ですので、日本人とまったく接することなく暮らしている人は少ないはずです。
これほどの人数がいらっしゃいますので、その中には日本人と仲良くなってご結婚に至るケースもけっして珍しいことではありません。

しかしながら不法残留(オーバーステイ)の外国人は非合法の身ですから、退去強制手続きにのっかって国外退去を求められる立場にあります。
この退去強制手続きの過程において、もし法務大臣から特別の許可(在留特別許可)を取得することができれば、以後は合法的に日本に滞在することができることとされています。

この在留特別許可は結果が出るまでに平均的には1年以上、長ければ3年以上かかることもあります。
在留特別許可をもらうまでは当該外国人は就労することができませんので、在留特別許可を求めずに、結婚成立後に自ら入管に出頭し出国命令により母国に帰国して、配偶者ビザで再入国する方法を選ばれる方もいらっしゃいます。

この記事では、オーバーステイの外国人と結婚し、在留特別許可をもらうときの注意点について解説します。

オーバーステイの外国人は退去強制されるのが原則

オーバーステイとは、当初、日本に合法的に入国・滞在していたものの、在留期限を徒過しても帰国せず、日本に残留していることをいい、日本語では不法残留と呼ばれます。
当初は合法的な存在であったという点で、入国の当初から不法の存在である「不法入国者」とは一線を画します。

オーバーステイ
無断転載を禁ずる
オーバーステイは不法残留罪という犯罪なので、退去強制となるのが原則です。

オーバーステイの外国人とも結婚することができます

日本人と結婚をする外国人に正規の在留資格が必要との法律はありませんので、オーバーステイの外国人のかたであっても、日本人と結婚をすることが可能です。

正規の在留資格で滞在している外国人と違って、手続き上いくつかのハードルがあることは事実ですが、大半のかたはきちんと結婚成立までこぎつけています。

オーバーステイの外国人も日本人と結婚することができます。

書類収集におけるハードル

オーバーステイであるか否かにかかわらず、日本人と外国人とが結婚するときには、「婚姻要件具備証明書」という書類で外国人が母国の法律に照らして結婚することができる旨を証明する必要があります。
オーバーステイ中であるとご本人が母国に帰って結婚のための書類を収集することが現実として難しいため、この点がハードルになることがあります。

ただし、母国にいらっしゃるご親族が、ご本人ために書類を収集し郵送で送ってくれることが大半で、実際にこれのみが原因で結婚できなかったカップルは少ないです。

本国での結婚登録にかんするハードル

国際結婚は、日本国だけでなく、相手国においても成立させる必要があります。このとき、日本で結婚が成立すると自動的に相手国でも結婚が成立する国(アメリカ、中国、ロシア等)もありますが、そうでない国もあります。

前者であれば問題は生じませんが、結婚をお考えの外国人が後者の国籍である場合、母国での結婚が完了しないことがあります。
母国での結婚が完了しないということは、母国ではお相手はまだ独身であるということで、これを「跛行婚(はこうこん)」といいます。

これは日本人でいえば、外国で結婚はしたけれど、市区町村役場に結婚の成立を報告しておらず、日本人の戸籍上、独身のままの状態であるということです。結婚相手の外国人が同じ状況であると、さすがにちょっとマズイということがお分かりになっていただけるでしょう。

このことが「安定的な結婚が成立していない」という認定につながることがあります。

配偶者ビザの申請には、原則として相手国においても結婚が成立したことを結婚証明書で証明する必要があります。

在留特別許可とは

在留特別許可
無断転載を禁ずる

オーバーステイの外国人は本来強制送還される身の上なのですが、日本人と結婚をしたという事実が積極的に評価されると、強制送還されずにそのまま日本に滞在することができる在留特別許可を得ることができます。

在留特別許可とは、退去強制手続きの過程において、外国人からの異議の申出に「理由がない」と認められるときであっても、人道的な配慮の必要性等の観点から、その者に在留を特別に許可できると判断した法務大臣の裁決の特例によって、退去強制事由に該当している外国人に特別に与えられる在留についての許可をいいます。

しかし在留特別許可は法務大臣により退去強制手続きの途中で「恩恵的に」与えられるもので、当然の権利として主張できるものではないところに、通常の在留申請とは異なる難しさがあります。もし在留特別許可が出なければそのまま強制送還されるため、ペナルティは原則として5年間の入国禁止(上陸拒否)となります。

もし在留特別許可を求めずに出国命令制度を利用して出国すれば、ペナルティは原則として1年間の入国禁止(上陸拒否)で済みますので、どちらのルートを選択するか、次項で解説するように在留特別許可が出るまでは就労できないことと併せて、ビザ専門の行政書士のアドバイスを受けながらよくよく比較衡量することとなります。

在留特別許可は、退去強制手続きの最終フェーズで出てくるものだから危険と隣り合わせなのよね。

結果が出るまでは就労できない

在留特別許可を得るまでの期間は、外国人は何らの在留資格もない非合法な存在ですので、就労することはできません。
バレないだろうと仮放免中に不法就労をして入管が把握するところになれば、不法残留罪のほかに不法就労罪という別の犯罪を犯すことになりますので、在留特別許可が遠のくどころか、強制送還後、二度と日本に入国できなくなる可能性すらあります。

後述のように素行が善良でない外国人に在留特別許可がでることはありません。

年単位で就労できないため、日本で在留特別許可を待つのではなく、出国命令制度を利用して出国し、配偶者ビザで再来日する方も多くいます。

在留特別許可に有利な事実、不利な事実

在留特別許可は、個々の事案ごとに在留を希望する理由、家族状況、素行、内外の諸情勢、人道的な配慮の必要性、日本における他の不法滞在者に与える影響など、諸般の事情を総合的に勘案して許否が判断されます。

在留特別許可の許可・不許可の判断は、有利な事実(積極要素)と不利な事実(消極要素)を個別に評価して、考慮すべき程度を勘案した上で、積極要素が明らかに消極要素を上回る場合に、許可する方向で検討されることとされています。

積極要素が1つ存在するだけで在留特別許可の方向で検討されるわけではなく、逆に、消極要素が1つ存在するだけで一切許可が検討されないというものでもありません。

特に考慮される積極要素の一例

・当該外国人が日本人と結婚が法的に成立している場合であって、かつ、次の両方に該当すること
  (ア)相当の期間夫婦として共同生活し、相互に協力して扶助していること
  (イ)子が夫婦の間にいるなど、婚姻が安定かつ成熟していること

その他の積極要素の一例

・当該外国人が、不法滞在者であることを申告するため、自ら地方入国管理官署(入管)に出頭したこと

特に考慮される消極要素の一例

・重大犯罪等により刑に処せられたことがあること
・出入国管理行政の根幹にかかわる違反または反社会性の高い違反をしていること

その他の消極要素の一例

・過去に退去強制手続きを受けたことがあること
・その他の刑罰法令違反又はこれに準ずる素行不良が認められること
・その他在留状況に問題があること

まとめ

オーバーステイの外国人が日本人と結婚したとき、在留資格「日本人の配偶者等」を得て合法的に日本で暮らす方法としては、在留特別許可の取得のほか、帰国して在留資格認定証明書交付申請で再来日する方法があり、多くのケースで入管は後者を勧めるでしょう。

在留特別許可のメリットとしては、日本の国外にでる必要がないため、結果が出るまで日本で一緒に暮らすことができる点です。
お子さんがいらっしゃるときには、家族一緒にくらすことが特に希望されるでしょう。

在留特別許可のデメリットとしては、結果が出るまでの1年から3年という長期にわたり、外国人は就労することができないという点です。
年単位の長期にわたり働くことができない外国人が家の中にいると、とくにそれが男性の場合には、夫婦双方にとってストレスとなりがちです。
このことから、いったん帰国して配偶者ビザ申請の結果がでるまで、外国人は自国でご自身の生活費を稼ぐという選択をされるカップルも少なくありません。

また在留特別許可を期待して退去強制手続きに乗ったものの、もし許可されないという結論になれば退去強制となり、帰国後5年間は入国禁止になることもデメリットです。

無断転載を禁ずる

一方、出国命令により帰国して在留資格認定証明書交付申請で再来日するメリットは、配偶者ビザ申請の結果が出るまで、自国で仕事をすることができる点です。また出国命令により自主的に出国すれば入国禁止期間が1年であることもメリットの1つです。

出国命令により帰国するときのデメリットとしては、結果を待つあいだ離れ離れにくらすことになる点で、特にお子様がいらっしゃるときには選択しづらいでしょう。またオーバーステイ以外の違法行為により無期限の入国拒否事由に該当しているケース等では、出国してしまえば二度と再入国がかなわないことも考えられるため、この場合には選択されないでしょう。

ビザを専門とする行政書士と総合的に検討し、ご家族にとってより良いと考える選択をしましょう。

わからないことは、マイプロがお手伝いします!


 

東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート行政書士事務所を開業。業歴は10年を超える。専門は入管法、国籍法。
error: