更新日 2021年6月14日
すでに自社・自店でアルバイトをしてくれている留学生が優秀で、ぜひとも正社員として採用したいという場合には、どんな点に気を付けるべきなのでしょうか。
法律上、アルバイトで働くことができる職種と、就労ビザが許可される職種とでは、大きな違いがあります。
この記事では、留学生のアルバイトを正社員としてお迎えするさいのポイントについて解説します。
目次
留学生のアルバイトは時間制限がある一方で、職種の制限はほとんどない
留学生は資格外活動許可を取得することにより、1週間につき28時間以内までのアルバイトをすることができます(長期休暇期間中は学校がお休みなので別ルールあり)。
留学生がたとえ資格外活動許可を受けてもアルバイトすることができないのは、風俗営業関連の業種です。
風俗営業と言っても性風俗に限定されませんので、バー、スナック、キャバクラ、アダルトショップ、パチンコ屋、マージャン店などがこれに含まれます。
これらの条件を守らずにアルバイトをすることは「資格外活動罪」という犯罪であるため、入管がその事実を把握すれば、在留不良者として御社で働くための就労ビザへの変更申請は許可されないことが通常です。
したがってまずは、留学生に入管法上適法な範囲内でアルバイトをしていただくようにしましょう。
留学生のアルバイトについては別記事「資格外活動許可とは」でくわしくご説明しているのでそちらをご参照ください。
そもそも就労ビザが認められない職種がある

上述のように、留学生がアルバイトとして働くぶんには、業種や職種にほとんど制限はないのですが、就労ビザは細かくカテゴライズされており、それぞれの就労ビザごとに、働くことができる業種と職務内容が決められています。
たとえばコンビニエンスストアでは多くの留学生がアルバイトをしておりこのこと自体は合法ですが、コンビニの品出しやレジ打ちといった仕事だけをすることが認められる就労ビザはありません。
留学生が本国からの仕送りだけで生活することには無理があるので、広範な業種・職種でアルバイトをすることが認められています。
しかしながら社会人となるとその職業を外国人に解禁することが日本の国益に合致するかという別の観点から、広範な法律上の制約が設けられています。
したがって、アルバイトの留学生を卒業後に正社員として採用したいというときには、業種・職務内容が就労ビザの対象であるかどうかを確認する必要があります。
留学生の学歴・職歴・経歴により、申請できる就労ビザが異なる
学歴不問で申請できる就労ビザ「特定技能」

たとえば御社で働いている留学生が日本語学校生であるとき、日本語学校を卒業しても通常は日本の「学位」を取得することができません。
このような留学生が母国で大学や大学院を卒業・修了していればその学歴を活用できますが、そうでない場合は、学歴不問の就労ビザを検討することになります。
学歴不問の就労ビザとして在留資格「特定技能」がありますが、このビザの対象は政府の指定を受けた特定の14業種にかぎられます。
14業種とは、介護,ビルクリーニング,素形材産業,産業機械製造業,電気・電子情報関連産業,建設,造船・舶用工業,自動車整備,航空,宿泊,農業,漁業,飲食料品製造業,外食業です。
御社がこれらの業界・業種に該当している場合は、アルバイトで働いている留学生が特定技能ビザを取得して卒業後も働くことができる可能性があります。
ホワイトカラーやエンジニアのための就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」
留学生が身につけた語学力やITスキルなどを活かして「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で働く場合には、大学卒業以上であることが求められます。
この場合、大学や大学院は外国の学校でかまいません。
専門士や高度専門士の学位を取得した専門学校の卒業生も、学校での専攻と強い関連性がある業種・職種であればこの就労ビザにチャレンジできます。
この場合、学位を取得した専門学校は日本の専門学校である必要があります。
御社でアルバイトをしている日本語学校生が母国で大学を卒業している場合には、たとえ日本で学位を取得していなくても、この在留資格「技術・人文知識・国際業務」を申請できます。
技術・人文知識・国際業務の在留資格については別記事「技術・人文知識・国際業務」をご確認ください。
受入れ準備としての雇用契約
就労ビザは、どの企業にどんな条件で就職することになったのかを雇用契約書等で証明しないと取得することができません。
このため、就労ビザが許可されていない段階で、御社と雇用契約を締結する必要があります。
しかしながら御社としては、ビザ変更が許可されていない段階で雇用契約を締結しなければならないことに抵抗を感じるかもしれません。
このような場合には、ビザ変更が許可されることを雇用契約の効力発生要件(これを法律用語で「停止条件」といいます。)とすることで対処できます。
なお、特定技能ビザで受け入れる場合は、「特定技能雇用契約」という特別の雇用契約を締結する必要があります。
特定技能雇用契約については、別記事「特定技能雇用契約」で詳しくご説明していますので、そちらをご参照ください。
受入れ準備としてのビザ変更申請

多くの会社で新卒入社の時期は4月であると思いますが、この場合は、前年の12月ごろから出入国在留管理局に対してビザ変更の申請をすることができます。
大学を卒業して学位を取得することが許可の条件となる就労ビザの場合、前年の12月時点ではまだ学位を取得していない段階ですが、とりあえず「卒業見込み証明書」を提出することにより申請が受理されます。
そして3月に実際に卒業できたら直ちに「卒業証明書」を出入国在留管理局へ提出することにより、晴れて出入国在留管理局が就労ビザを許可する段取りとなります。
大企業や外国人雇用に力をいれている中小企業においては、就労ビザへの変更申請は、会社が行政書士の費用をふたんしてくれることがほとんどです。ビザのことは留学生が自分でやるだろうと考えてはいけません。なぜなら留学生が持っている留学ビザの新規取得の申請は、大学や専門学校や日本語学校の職員が出入国在留管理局へ行なったもので、留学生には就労ビザの取得をそつなくこなすだけのノウハウも技量もないことが通常だからです。
留学ビザから就労ビザへの変更許可申請の詳細については、別記事でくわしくご説明していますので、そちらもご参照ください。
まとめ
留学生は時間制限はあるものの、資格外活動許可を取得すればほとんどの業種・職種で働くことができますが、外国人がフルタイムの社会人として働くことができる業種と職種には大幅な制限があります。
自社での仕事で就労ビザが許可される可能性があると判断したときには、雇用契約を結びます。このとき、就労ビザが要求する雇用条件を満たすようにします。
その後、出入国在留管理局へビザを変更する申請(在留資格変更許可申請)をします。
